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天台宗・真言宗・浄土宗・浄土真宗

仏前

天台宗

天台宗の葬儀は 顕教法要(けんきょうほうよう)の法華懺法(ほっけせんぽう)(法華経を読誦する事で煩悩を薄くし滅罪する作法)、例時作法(阿弥陀経を読誦する事で極楽往生の指南とする作法)、密教法要の光明供(こうみょうぐ)(阿弥陀如来の来迎を得てその指導の下に故人を引導して仏と成す作法)の三種の儀礼により営まれます。
顕教とは仏法を理解しやすいように言葉・文字を用いて説いたものであり、密教とは仏と自分が一体である事を念じ仏の加護によって仏の境地に達しようとする秘法の事です。天台宗では顕密一致を説きます。供養する遺族、供養される故人様が一体となり、仏の本性を開発し、共に仏道を成して行く事が天台宗の葬儀の本質であるとされます。
枕経(臨終誦経りんじゅうじゅきょうと呼ばれる)では 阿弥陀経が読経されます。通夜式では授戒が行われ、戒名を授かり、戒を護持して犯さざる事を仏前に誓います。葬儀式は 光明供修法阿弥陀如来の来迎を得て、その指導の下に故人を引導して仏となす密法作法)と故人の成仏を祈る引導の作法が主となります。適時 法華経と阿弥陀経が読経されます。

真言宗

弘法大師の作と言われるご詠歌(ごえいか)“阿字(あじ)の子が、阿字の古里、立ち出でて、また立ち帰る、阿字の古里”は真言宗に於ける葬儀観を示したものとされます。阿は梵字で書かれ、大日如来とその生命を表わします。死者(亡者と呼ばれる)を宇宙生命の源である大日如来の大生命に包まれている弥勒菩薩の浄土である“都率浄土”へ送り返す事が葬送儀礼の精神とされます。従いまして 葬儀式は即身成仏への引導作法として示されます。剃髪・授戒・戒名の授与までが前段階で 大日如来のもとへ導くための準備段階の作法で、それ以降が後段階として 大日如来との一体感 すなわち 永遠の生命との一体感をきわめる作法となります。具体的な葬儀の進行は 真言宗内 宗派、地域により異なります。
枕経では 死者の成仏を勧める“般若理趣経”が読誦され、“慈救の呪”を唱えて悪魔を祓い、阿弥陀如来の“陀羅尼”、“光明真言”、御法号“南無大師遍照金剛”を唱えます。
通夜式でも 理趣経を読誦し、慈救の呪、光明真言、御法号が唱えられます。
葬儀式では 前賛、理趣経などが読誦されます。

浄土宗

浄土宗の葬儀は 死者を仏の弟子として、仏の本願により阿弥陀仏の下にある極楽浄土へ往生することを教え導き、本来の住処であり 生命の根源である極楽浄土へ立ち帰る凱旋式として行うとされます。更に 参列する方々にも、悲しみの中のも 自らの死の意味を問い 清浄な心で仏の教えに耳を傾け 授戒し新たに仏の弟子となった故人様と共に 一心に念仏せる生活に入る契機となるよう願って行われます。葬儀式の構成は 浄土宗の通常の法要(序分、正宗分、流通分)に授戒と引導が加えられたものです。序文は 法要を行うに当たって仏様をお迎えする部分、正宗分は 法要で仏様のお話をうかがう部分、流通分は 法要を終えたら感謝して仏様をお送りする部分、授戒は 戒名を授けて仏様の弟子とすること、引導は 仏様の弟子として教え導くことをさします。
枕経は 臨終行儀として伝統的に重視され、この時 授戒することが基本とされて居りました。しかし 現代では 枕経では来迎仏をあげて念仏するだけで良いと変化し、授戒は通夜式で行うことが一般的となって居ります。通夜式では 四誓偈(しせいげ)が読誦されます(もしくは仏身観文(ぶつしんかんもん)、阿弥陀経)。葬儀式では 四誓偈 もしくは仏身観文が読誦されます。

浄土真宗

浄土真宗の葬儀は 他の宗派と大きく異なります。葬儀の中に授戒と引導が無い為、葬儀は 日常の勤行がそのまま葬儀式の構成となります。これは 在家仏教ゆえに戒が無く、“絶対他力”ですので 信心をいただいていない人が亡くなっても その人を往生・成仏される力は私たち凡夫(僧を含む)には出来ない 阿弥陀如来の一人働きによるのみ とされ、“平生業成”から生前に信心をいただいていたならば 浄土往生と成仏は すでに約束されている事なので 故人様の成仏を祈る必要はない、との考えから引導も有りません。又 人間には他に分かち合うだけの功徳が備わっていない との考えから、他宗派と同じ回向の考え方も有りません。往生即成仏と成りますので、死装束は不要であり、霊やケガレも認めて居りませんので 清め塩は使いません。浄土真宗の葬儀式は 故人様が死という事実を身をもって示し、私達に死を迎える準備をしなければならない事を無言の内に教えてくれて居る事から、これを機縁として本尊阿弥陀如来に報恩感謝し、仏様の教えを学ぶ“聞法”の場であると位置付けられて居ります。従いまして あくまでもご本尊を中心にしてご葬儀は営まれます。
臨終勤行の枕経では 阿弥陀経(本願寺派)が読誦され、通夜式でも同様です。
葬儀式では阿弥陀経が読誦されます。